コラム
2024年5月13日
「こうでないといけない」から脱却するために大切なこと
前回、「こうでなければならない」という規範が人を縛り付けることについて書きました。「こうでなければならない」という考えはみな多かれ少なかれ持っています。交通ルールを守るといったような生活を安全に過ごすために必要なものから、「こうであらねば生きていてはいけない」という自身の人生を左右する、とても重大なものまで。
「こうであらねば生きていてはいけない」という信念は、ドライバー(driver/駆り立てるもの)と言います。特に人生に影響を与えるドライバーは、「強くあれ」「努力せよ」「他人を喜ばせよ」「急げ」「完全であれ」の5つであると言われています。「こうであらねば生きていてはいけない」という信念は、言い方を変えれば「こうできている間は私はOKである」、自分が自分でいていいためには、条件をクリアしていなければいけない、ということです。「完全であれ」というドライバーを持っている人は、例えば「仕事を完璧にやっている間は自分はOKである」と思っていることになりますが、完璧であるということは、いつまでもそれを求めて終わりのない道を進むことと同義です。条件付きの自尊心は、本当の意味での自尊心ではなく、「できなければ自分はOKではない」という落とし穴がそこかしこに空いている状態です。
とはいえ、その信念があるからこそ生きられる、人生をサバイブできるという側面もあります。強い自分であること、完全な自分であることなどを維持することで自分を保ってきたのだ、という方もいるでしょう。そうであればあるほど、例えば「弱いあなたでもいい」「がんばりすぎなくてもいい」と言われたとしても、それまで生きるために役立ってきた信念を手放すことは容易ではないでしょう。
ではどうすればいいのでしょう。
私が思うのは、自分の感覚を大切にしてほしい、ということです。信念に駆り立てられている間は、自分の感覚に鈍感になりがちです。なんだか心がザワザワする、不安な気持ちになる、という感覚があっても目をつぶって、ないことにしているかもしれません。逆に、楽しい、安心する、という感覚も見過ごしてしまっていることもあります。安心したいい感覚も不安で嫌な感覚も、あなたの内側では本当は感じています。少し立ち止まって、自分の中の小さな自分は何を感じているか、楽しいのか、嬉しいのか、怖いのか、悲しいのか、それを感じて欲しいのです。なぜならそれは、おそらくあなたが子どもの時、周囲の大人に認めて欲しかった気持ちだから。今の、大人になったあなたに、それを掬いとって欲しいのです。
自分の中の小さな自分を安心させることは、「こうでなければ自分はOKではない」という信念から脱却するために大切なことです。ぜひその子の手をとって、一緒に歩いてほしいと思います。
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